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その果てにあるもの8

その果てにあるもの7続き




ここは、どこだ。


コンクリートで出来た道。足早に歩いている人々。通りを行きかう車。立ち並ぶビル。
見上げればどんよりとした灰色の空に、幾つも折り重なる黒い線。

街。見慣れた世界。これが現実か幻なのか、思考もおぼつか無いままただひたすら歩いた。













「佐伯くん!」

突然、誰かに声を掛けられぼやけていた思考が覚醒する。
後ろを振り返ればそこには見知った上司の姿があった。

「…片桐、課長?」

スーツ姿のその人は、酷く心配した表情でこちらに駆け寄って来た。

「心配、しましたよ。なかなか帰って来ないので…もうこんなに暗くなってしまいましたし。」

そういえば辺りはもうすっかり暗くなっていた。
確か歩き始めた頃はまだ明るかったはずだ。いったいどれだけ歩いたのだろう。
わからない、が不思議と歩けてはいたのだろう。足の痛みと体の疲労感が今までの自分の行動を物語っていた。

「暗くなったからって、大丈夫ですよ。俺は小学生ですか。」

「すっ、すみません。それもそうですよね。」

どうやら他人と感覚が少しずれているらしい、しかし本気で俺がなかなか帰ってこないことを心配していた様子の上司に、俺は軽口をふまえてそう答えれば、
彼は焦り顔で申し訳ないです謝りつつも、ようやく少し安堵の表情を浮かべた。
本当に気が弱いのか自分に自身がないのか、この人は開口一番に謝る癖がついてしまっているのだろう。
こちらが意見を出しているだけなのにすぐ謝られるのは、何度もやられるとあまり気分の良いものではない。
前はそうやってすぐ謝るのは止めたらどうですかと何度も思ったことがあるのだが(実際口に出して言ったこともある)、今はそれですらとても懐かしいものに思えた。

「佐伯くんはこのまま家に帰りますか?私はまだ遣り残したことがあるのでキクチに戻りますが…」

「あ、俺も戻りますよ。キクチに」

どうやら、片桐課長と会った場所は会社のすぐ近くだったらしい。
少し歩けばすぐに見慣れた道に出た。
知らない道を歩いていたつもりが、帰巣本能とでも言うべきか、不思議といつの間にか慣れ親しんだ土地へと足を運んでいたらしい。

街灯が灯る慣れ親しんだ道を歩く。会社に着くまでの僅かな時間、課長とはとりとめも無い会話をした。
こうやって、何気ない普通の会話をするのはいつ振りだろう。以前のことがもう何年も前のように思えた。

「そういえば、遣り残した仕事って何ですか?もし時間が掛かるようだったら俺も手伝いますよ?」

「あ…、あっ、良いんです。直ぐ終わりますし、佐伯くんは気にしないで下さい。」

ほんの一瞬、焦りや不安といったものが声色から伝わってきたが、直ぐにそれも掻き消え、心配しないで下さいと笑顔で答えた。
聞かれたくなかったことだったのか。少し気にはなったが、そう深く考えることでもないだろう。
俺はこれ以上追及することもせず、そうですかとだけ答えた。

オフィスは電気が消え真っ暗な状態だった。さすがにこんな時間まで残業するやつはいないか。
明かりを点けるとそこは以前と何も変わらなかった。俺が、あの得体の知れない空間に閉じ込められる前と。
自分の机を見る。綺麗に整理整頓されたデスク。何一つ変わった様子はないそのままの状態だった。
ふと、乱雑に本や書類やらが置かれているデスクが目に入った。
本多、か。あいかわらずだな。頭に本多の顔が浮かぶ。またそこで懐かしさを感じた。
この光景も以前は毎日見ていた。こうやって戻ってきて見るとなんだか不思議な感覚だった。
これは夢だろうか。もしかして実はまだあの空間に捕らわれていて、日常を夢見ているだけではないだろうか。
それとも、あの空間にいたことの方が全部夢だったのだろうか。

「だとしたら、史上最高で最悪な悪夢だな…。」

「さ、えきくん…?」

ハッと声がした方に目をやると、片桐課長が心配そうな目でこちらを見ていた。

「あ、いえ。何でも…。」

「大丈夫ですか?ぼーっとしていらしたので。お疲れのようですし今日は家でゆっくり休んで下さい。」

疲れていないわけが無かった。片桐課長の言う通り今日は早く家に帰って休もう。
そうすれば、きっと………。

お疲れ様です、と仕事がまだあるのでという課長を残し、先にオフィスを後にした。
自宅に帰り、無事家に帰れたことに安堵する。ただやはり少し不安があった。念のため、部屋の隅々まで変わりがないか確認した。
以前と何一つ変わらない。自分の部屋だ。ここは、俺の…
ようやく、気が抜けたのか突如疲労感が体全体を襲う。体が酷く重い。
ただこの疲労感でさえ、今は自分を安心させるものであった。
これが現実だと、戻ってこれたことは夢ではないのだと、自分に教えてくれている様な…。
着替えることもせずに、そのまま重力に任せる形でドサリとベッドに倒れこんだ。
急激に襲ってくる睡魔に抗いもせず、そのまま深い眠りへと落ちてゆく。
もう一度目覚めた時に見る世界が、ごく普通の日常であることを願いながら………。

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